資材置き場

なんでも蟻

【感想】BAROQUE

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 心臓を貪り骨を齧り寄生虫を体に這わせ天使の羽を背に付け欲情すると全てのものが美女に見える、そんな主人公を操作しながら(ある意味)世界を救う物語。

幼少期の私に多大な影響を与えたゲームのうちの1つであり、その退廃的な世界観とストーリーに夢中になった。今回、久しぶりにこのゲームをプレイするに至ったきっかけは少し前にコミカライズ版が復刻されたからである。この上田信舟氏によるコミカライズも素晴らしい出来で語りたいぐらいなのだが話せば長くなるのでまたの機会にしよう…。

本作はいわゆるリアルタイムなローグライクゲームだが、主人公は心臓を食べてVTを回復したり、骨をかじって特定の場所にワープしたり、寄生虫を寄生させて特殊技能を一時的に獲得したり、とにかく異質なゲームなのである。その特色を世界観にしっかりとおとしこんでおり、個人的にかなり満足度が高い。

その異質さが噛み合う世界とは一体どんなものなのかというと、主人公が一番初めに行動する外界は一面赤黒い空に覆われており、どこもかしこも腐食している。見ているだけで異臭がしてきそうな程である。人らしき存在も確認出来るが、先の大熱波が原因で酷く歪んでしまっている。彼らは妄言をうわ言のように繰り返すばかりでまともな会話はあまり出来ない。遠くに高くそびえる神経塔に入るとそこは不気味な異形の巣窟になっており、こちらに害を与えてくる。どこにも安息の地は無くその場にいるだけで不快感が襲ってくる。それに加えておどろおどろしいBGMが不快感に追い打ちをかけてくる。その統一された気持ち悪さがたまらなく気持ちよくて、まるで私もバロックに侵されているような気がしてくる。

本作はバロックがテーマになっている。バロックとは"個々人が各々持っている妄想"のことである。ゲーム中では歪みとも称される。この世界で生きる人達は誰でも大なり小なりこのバロックを抱えており、もちろん主人公にも歪みが存在する。

主人公は創造維持神を浄化、つまり世界から歪みを無くすように命令されるのだが、彼らは最終的に歪みを抱えたまま生きていくことを選択する。歪みを無くすという考えこそが歪んでいるー人によっては彼らの選択は間違っている、ただの逃げだと感じるかもしれないが、歪みを排除するのでは無くありのままの姿で生きていこうとする選択は私にとって救いだったのだ。救いのない物語が現実世界の人間を救う。なんとも皮肉な話しかもしれないが、だからこそ私はこのゲームが好きなんだと思う。

本作はSS、PS、PS2Wiiそしてアーカイブスと幅広く展開しているので気になった方は是非ともプレイしてみてほしい。そしてバロックにどっぷりと冒されてほしい。